工房閑話

 

 

翻訳のこと

 

 周知のとおり、完璧な翻訳など存在しないし望むべくもない。しかし、明らかな誤りは困る。これは、技術書であろうが文学作品であろうが、ジャンルを問わない。

 

 過日、「NCISネービー犯罪捜査班」(アメリカの人気テレビ番組、原題はNCIS)を視ていた時に、気になる字幕があった。殺人事件の被害者である二等兵の経歴を士官学校卒業としていたのだが、Military School を士官学校と訳した結果である。米国のMilitary Schoolに該当するものが日本には無いのでイメージしにくいのだが、通常のカリキュラムに軍事訓練をプラスした全寮制の私立高校をイメージしてもらうと、かなり近いのではないだろうか。卒業後の進路は、士官学校(本物の)に進む者もいなくはないが、普通の高校と変わりはない。ちなみに現大統領が席を置いたNew York Military Academyも同様の教育機関だと思うが、卒業後、このところ日本での知名度が上がっているフォーダム大学に進んでいる。

 

 恐らく有史以来、士官学校の卒業生が二等兵だったことはないだろう。従って文脈から誤りに気付くのは難しくないはずだが、テレビドラマの翻訳に許される時間と労力に限りがあるということだろうか・・・。仕事柄、些細な点が気になってしまうのだが、日常生活でこの癖はあまり歓迎されない。

 


                             2019年5月25日

 


 

 

           

 

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