工房閑話

 

 

自己防衛

 

 新型肺炎が猛威をふるっており、パンデミックに至る危険性を指摘する専門家もいる。中国、とりわけ武漢の人々の苦境は察するに余りある。日本政府は水際作戦を始め万全を期していると云っているが、発生以来、恐る恐る対策を小出しにしているように見えてしまう。ある専門家は初動が極めて重要と説いている。確かに、様子を見ながらだと手遅れになるだろうことは容易に想像がつく。

 

 ところで、先日の在武漢邦人救援の第一次政府チャーター便に二人の積み残しがあったらしい。発熱者は出国させないと云う中国側の規定に拠るとされているが、武漢の治療事情からすると、お二人は絶望的な思いに捉われたことだろう。その後この方々に関する報道はないが、この場面こそ政府の頑張りどころだと思う。ことは日本人の生命に直接かかわり、また本来感染の疑いのある人を、本国に移送するのに問題のあろうはずがないのだから、無理な交渉でもない。世論の反発を受け、運賃8万円を公費負担とする方針転換があったが、優先順位を間違えている。

 

 一方同時期に米国も専用便を出しているが、積み残しの報道はない。こちらは通常の出国手続きを通っていないと思われる。従って仮に発熱者がいても収容に支障はなかっただろう。いずれにしても置き去りにすることは考えにくい。米国市民はこの種の問題に大変敏感ゆえ、現政権も大いに力が入るのだろうが、もともと自国民の生命を守ることに力点を置くのは同国のDNAだ。過日北朝鮮で拘束された米国市民数名を救出したことは記憶に新しい。今回の件に於いても政府の姿勢の違いが際立った。

 

 この度の災禍はグローバル化の一側面とも捉えることができる。経済への影響も心配されているが、食糧危機の方がより深刻なような気もする。ともあれ、お上に任せて平穏に暮らせた時代に戻すことは叶わない。あらためて自己防衛を考える必要がありそうだ。あるいは自己責任と云う方が分かり易いかも知れない。


 

                             2020年2月6日

 

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