工房閑話

 

 

自己防衛 2

 

 昔、クルーズの達人から、日本が誇る豪華クルーズ客船「飛鳥」の体験搭乗に誘われたことがある。「クルーズの極意はパブリックスペースを最大限に楽しむことである。部屋は窓の無い一番安い部屋で良い。」と聞いたことがあったが、まさにこの達人は次の日の朝まで、一度も部屋に帰ってこなかった。

 

 新型肺炎の発症者を出したクルーズ客船「ダイヤモンドプリンセス」の乗客には、お気の毒としか言いようがない。医療環境の整わない船の狭い室に2週間にわたり缶詰にされてしまい、この間に感染した可能性のある船客も少なくない。適切な対応があれば、亡くなる方も、感染する方も減らすことができたのではと云う疑念が拭えない。この事態にはクルーズの達人も真っ青だろう。


 その後新型肺炎対策の決め手の一つである検査体制が整わないまま、患者が日本全土に広がっている。検査の蛇口が閉まっているので、隠れ感染者も少なくないだろう。武漢にチャーター便を送ってから1か月以上が経っているが、未だ一日当たりのPCR検査数は1,000弱と云われている。医療機関からの切実な検査要望は大半が拒否されている。一方、後発の韓国が一日当たり約10倍にあたる10,000件の検査を実施しているらしい。この差は何なんだろう。

 

 遅々として対策が進まない中、2月27日に突然首相から全国の公立学校への臨時休校要請が表明された。方針そのものの是非を置くとしても、唐突で拙速な通告は国中を動揺させるには十分なサプライズだった。一連の政府の対応は極めて不可解で、一市民の目からは、残念ながら腑に落ちない事の連続である。国会答弁も中身に乏しく情緒的な言葉が踊っている。一刻も早く実効のある体制を整備してもらいたい。また、我々が想像力を働かせながら自己防衛に努めることも早期収束に繋がるだろう。

 

 ちなみに、WHOはイタリア、韓国、イランと並んで、日本には最大の懸念有りとしている。インド、中国からも渡航を制限されることになったが、次はアメリカからかとも噂されている。こんな中3月1日に、駐在先の広州から一時帰国していた知人が、家族とともに中国に戻った。もし、今日戻っていたら14日間の自宅待機か隔離処分になっていたところである・・・。グローバル基準によると、今の我が国の評価はこうなる。アメリカのビザをなりわいとする身にとっては、ビジネスに於いても気の揉める日が続きそうだ。


 

                             2020年3月3日

 

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