工房閑話
千年の王城の地
家人に鼻面を引き回されるままに酷暑の京都に出かけた。お目当ては祇園祭り。人混みに揉まれながら烏丸四条に足を運び、宵山を見物。請われるままに一人千円也を支払って、有名な函谷鉾に登ったが、鉾の中からの眺めのみならず、目の前のコンチキチンの祇園囃子の音色も格別だった。翌日の山鉾巡行は、華麗な山や鉾、またそれを操る洗練された所作から歴史を経た高い完成度が伝わってくる。
さすがに、この時期の京都の陽気に寺社巡りの意欲も挫かれてしまうが、宿の部屋から眺める鴨川と、背後の山並みの眺めに飽きることが無い。鴨川も三条あたりまで上がってくると、さすがにインバウンドの賑わいからも解放され、歴史に培われたであろう風情を感じさせてくれる。目を凝らすと東山の緑の中に黒々とした伽藍が点在している。フロントに降りて寺の名前を訊ねてみたが、うら若き女性スタッフには難問だったようで、PCで地図を開いて熱心に調べてくれたものの、解決には至らなかった。記憶を辿ると遥か昔、学生時代に宵山を見物していたが、肝心なところは思い出せないにもかかわらず、汗にまみれたズボンが脚に纏わりつく不快な感覚は蘇ってきた。実に勿体ない話だが、若さとはこう云うことかも知れない。
部屋に戻ってあらためて調べてみると、左手はどうやら金戒光明寺であるらしい。法然ゆかりの古刹から幕末会津藩の悲劇に思いが巡っていった。視線を右に移すと南禅寺の伽藍らしきものも見えてきた。千年の王城の地の魅力は尽きることが無い。
参院選挙の投票日の夜に羽田に帰投した。ポピュリスト政党が想定を超える躍進を果たし、歴史の転換期を感じさせる結果となったが、深刻なインフレを招来したナントカミクスのおかげで、ようやく欧米のトレンドに連なることができたようだ。大敗を喫しながら、懲りない自民党に再生の道は見えてこず、政治の混乱は長きに渡りそうだ。そう云えば、祇園祭り名物「厄除け粽」を買い忘れてしまった。
2025年7月31日