工房閑話

 

 

コロナ考

 

 学生時代に観た吉本新喜劇は鮮烈だった。なにしろ看板俳優だった花紀京は、当時の吉本の得意技とも言えるギャグのお世話になることなく、舞台に現れるだけで観客を笑いの渦に巻き込んでしまうのである。花菱アチャコとの名コンビで昭和の漫才の最高峰を極めた、横山エンタツの次男と云う血筋に拠るところも大きいのかも知れない。
 
 昨今のお笑い芸人の芸能界進出には目覚ましいものがある。いまや落語・漫才は人気の職業となり、あのNHKに於いても、ドラマ、バラエティー出演に留まらず、コロナを始め各種社会問題に自説を開陳するまで職域が拡がっている。泉下の名人も苦笑しているかも知れないが、本業の方はどうにもいただけない。あくまで個人の見解だが、少しも面白くない。話術は重要だが、それだけではない事はあのチャップリンで良く分かるし、意外性も無視できないだろう。それは驚きに繋がり、驚きは笑いを生み感動さえ与えてくれる。いずれにしても先天的な才能が大きくものを言いそうである。

 アベノマスクはエイプリルフールのギャグとして世界を沸かせたが、第二弾も国民を「アッ」と云わせた。誰もが「まさか」と思う不意打ちだった。Go toトラベルはと云うと、終戦の8月に、しかも沖縄にその副作用が顕著に出てしまっている。これは究極のブラックユーモアだろう。もはや、その辺の漫才作家では遠く及ばない。しかし、お上のコロナ対策が演芸大賞では悲しすぎる。

 

 

                            2020年8月13日

 

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