工房閑話

 

 

バイデン政権誕生

 

 熾烈な選挙戦を制したバイデン新大統領だが、就任までにはあまたの障碍と混乱が待ち受けていた。とりわけ、トランプ支持者による前代未聞の連邦議会への乱入は、米国の深刻な分断を物語っており南北戦争を彷彿させる。ともあれようやく新政権が始動した。

 

 米国世論は「Fix」と云う言葉で、アメリカ民主主義の綻びを「修復する」ことを新政権に期待している。就任演説は歴代大統領に劣らず格調が高く、また分かり易いものになっており、トランプ政権4年間で醸成された分断を解消すべく、国民に「Unity(結束)」を強く訴えている。そして、すべてのアメリカ国民の大統領になるとしている。ホワイトハウス報道官は、「Truth(真実)」と「Transparency(透明性)」を取り戻すと云う新政権の情報発信の方針を発表した。

 

 なりふり構わぬ4年間の徹底した自国第一主義は、アメリカのみならず世界中に深い傷跡を残したが、これに終止符を打つアメリカの選択は、米国民主主義の復元力を示している。前大統領に指名された閣僚が、良識を欠いた政策に、その地位を賭して異を唱え相次いで辞任した。またトランプ政権下で保守派判事が多数を占めるに至った最高裁も、トランプ陣営の選挙違反の訴えを法に基づいて退けている。顧みれば「アメリカ追随」は戦後75年に渡り日本政治の金科玉条であり続けてきたが、最も肝心なところを見逃している。遅れ馳せながらではあるが、このことは学ばなければならない。


 

                            2021年1月26日

 

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