工房閑話

 

 

東京2020+1

 

 猛暑とCOVID19の急拡大のなか、とにもかくにも五輪が始まった。開会式の主催者(と思われる)二人の冗長な演説はいただけない。前組織委員長であれば少しは短くなったのだろう。ともあれ、オリンピッグ級のギャグが出てこなかったことは不幸中の幸いだった。

 

 延々と続いた場外乱闘はコロナを別にしても、五輪の概念を充分過ぎるほど変えてしまった。主役がようやくアスリートに移り、柔道女子48キロ級の渡名喜選手が銀メダルを獲得し、日本人メダル第一号となった。これを取り上げたNHKの番組で、ゲストとして招かれた女性オリンピアン達が、自身の思い出を交えながら、彼女のメダル獲得を賞賛した。しかし、ステレオタイプの内容は、渡名喜選手の実に立派な戦いぶりに相応しいものはなく、興を削がれてしまった。

 

 決勝戦で渡名喜選手を下したのは、コソボのクラスニチ選手である。前代未聞のパンデミック下の東京オリンピックは、外国人選手に、より大きな負荷を掛けている。さらに未だ紛争の復興途上にある、コソボからの参加の苦労は想像に難くない。ほんの少しの時間でも良い、金メダリストを称え、かの国について語る知恵と優しさがあれば、ホスト国としての品格を示し、さらには目下行方不明の五輪開催意義発見の小さな一助にもなると思うのだが、折角の機会を逃している。

 

 一方、医療逼迫の危機感を訴える首都圏の病院の深刻な様子がニュースで流れていた。次の瞬間、賑やかな音楽と共にオリンピックに切り替わった。告別式のようだったアナウンサーのモードも、一気にお祭りに変わった。ちなみに本日、東京都の感染者数は過去最高の2,848人と発表があった。


 

                            2021年7月27日

 

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